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自治体と教育現場が二人三脚でICT化を推進。テレワークで年間162.6時間の勤務短縮に成功

愛媛県
西条市

POINT

  • テレワークによって校務支援システムを自宅で利用可能に。緊急事態宣言による一斉休校時には100%の教職員がテレワークを利用。

  • 教職員1人あたり年間162.6時間の勤務時間の短縮に成功。現在も小中学校教職員の6割がテレワークを実施中。

  • 教職員の休日出勤が減少。育児や介護を行う教職員も生活に合わせた働き方を選べるようになり、「働き方は柔軟でいい」という意識改革も起こす。

校務支援システムが教職員のテレワーク実施のハードルに

愛媛県東部に位置する西条市。瀬戸内海に面し、西日本最高峰の石鎚山を擁する同市には約11万人の市民が暮らしています。人と人とが繋がり合う手段としてICTを活用するという理念のもと、西条市は様々な分野での情報化政策に力を入れています。教育分野でもICTを活用した改革を進めてきました。西条市 ICT推進課 副課長の渡部誉氏は説明します。

西条市 ICT推進課 副課長 渡部誉氏

西条市 ICT推進課 副課長 渡部誉氏

西条市立氷見小学校 校長 藤原利恵氏

西条市立氷見小学校 校長 藤原利恵氏

渡部氏:「その施策の1つが2015年度に始めた教職員の校務の電子化です。具体的には市内の小中学校35校に校務支援システムなどを導入しました」

校務とは児童生徒の名簿管理や成績処理、通知表の作成など、授業関連以外の教職員の業務全般を指します。校務支援システムの導入によって教職員の業務負担は大きく軽減しました。西条市立氷見小学校 校長の藤原利恵氏はこう話します。

藤原氏:「校務支援システムを利用することで成績処理などに掛かる時間が削減できました。以前は2~3日掛かっていた他校の先生方との情報交換も瞬時に行えるようになりました」

しかし、校務支援システムは児童や生徒、職員の個人情報を扱う秘匿性の高いシステムのため、職員室外での利用を制限せざるを得ません。

藤原氏:「小中学校には育児や介護の事情を持つ教職員が多くいます。勤務時間内で終わらない業務があると、以前は資料を自宅に持ち帰って作業をしていたのですが、校務支援システムが導入されたことでそれができなくなってしまいました」

平日に残業できないため、休日出勤する教職員も増えてしまいました。どうしても自宅で作業を行わなければならない場合は、管理職の許可を得てUSBメモリーにデータを保存することも認めましたが、セキュリティ上の不安が生じていました。

パブリッククラウドの導入により6割の教職員がテレワーク実施

こうした課題を解決するため、当時、渡部氏が所属していた西条市教育委員会の職員と教職員たちで組織する「情報化推進委員会」などがさらに使いやすいICTのあり方を検討し、地元のシステムインテグレーターなどの提案を得て、テレワークの導入を決めました。

渡部氏:「西条市のICTシステムを司るサーバー群をパブリッククラウドに移行するのと同じタイミングでテレワークの導入を進め、組織的・人的・物理的・技術的な安全管理措置を整えていきました」

2015年11月にトライアルで一部の学校でテレワークを導入し、2016年4月に本格的な運用をスタート。しかし、当初はテレワークに対する誤解もあり、実際にテレワークを行う教職員はそれほど多くなかったと言います。

渡部氏:「例えば、家に帰ってまで仕事をさせるのかという誤解です。職員室で仕事をしてもいいし、自宅に持ち帰ってもいい。それぞれの事情に合わせて、使い方は皆さんの判断に任せますということを繰り返し説明しました」

藤原氏もテレワークを利用するのが遅かった方だと言います。

藤原氏:「ICTツールに対する苦手意識があったからです。市から派遣された“ICT支援員”が私のような教職員をサポートしてくれたことでテレワークへの理解が進みました」

西条市では現在、約900人いる小中学校教職員の6割以上がテレワークを行っています。

テレワークの実施環境

西条市は自分たちで物理的なサーバーを保有する体制から、マイクロソフトのパブリッククラウド「Microsoft Azure」を活用してサーバー機能をインターネット経由で利用する体制に移行。教職員が自宅のパソコンからクラウド上に構築された校務支援システムをインターネット経由で利用する仕組み(仮想デスクトップ)を採用し、テレワークを実現している。

二要素認証:2種類の認証要素を組み合わせて認証を行うこと。例えば、IDとパスワードに加え、スマートフォンのアプリに表示されるワンタイムパスワードを組み合わせて認証を行うこと。

PIN:Personal Identification Numberの略で、日本語に訳すと「個人識別番号」。パスワードと異なり、PINはデバイスと密接に関連付けられている。PINは設定したデバイス(パソコン)とセットでなければ使えない。

テレワークが浸透してコロナ禍による臨時休校時の利用率は100%に

西条市はテレワークの導入から数年間、全教職員に対してアンケート調査を行っていました。それによって満足度や利用状況を把握し、課題の解消を図るリズムを作ることでPDCAサイクルを確立したのです。

渡部氏:「様々な質問を用意していろいろな意見を知ることで課題を見つけ、それを解決していくという手法で1年に1回のPDCAサイクルを回していきました」

年々、テレワークの利用者は増えていきましたが、教職員の意識が大きく変わったのは2019年に総務省が主催する「テレワーク・デイズ2019」に西条市が参加したことによります。夏休み期間中でしたが、教職員は校務や授業のための教材作りなど、通常、職員室で行っていたことを自宅で行ないました。それによって、テレワークが「勤務時間外の作業をするためだけの手段」ではなくなったのです。

藤原氏:「テレワークに対する意識が大きく変わりました。平日の勤務時間内でもテレワークをしてもいいんだと。ちょっと衝撃的でしたね」

この経験は、その後に訪れるコロナ禍でのテレワークの活用に役立ちました。

藤原氏:「もしテレワーク・デイズ2019に参加していなければ、教職員は勤務時間内にテレワークを行うことを遠慮していたと思います。テレワーク・デイズ2019での経験を得たことで勤務時間内でも堂々とテレワークができるようになりました」

西条市は電子黒板やデジタル教科書などといった授業の質を高めるためのICTツールも小中学校に導入している。

実際、コロナ禍での施策はスムーズに進みました。3密を避けるための時間差出勤やテレワークを実施できたからです。コロナ禍で全国一斉に臨時休校になったときのテレワークの申請率と利用率は100%だったと言います。
「テレワークは学校現場では無理だろう」という教職員の意識が変わり、実際に勤務時間内にテレワークを行ったことで、「働き方はそれぞれの事情に合わせて柔軟でいい」という意識がさらに高まったのです。

藤原氏:「本校では、臨時休校になった時点で半ば強制的にすべての教職員にテレワークを申請してもらいました。実際にテレワークを行うか否かは各教職員の判断に任せたのですが、あの時期は全員が何らかの形でテレワークを行っていました」

校長を務める藤原氏にとっては、自然災害などの警報による臨時休業等の保護者への連絡メールを自宅から送信でき、文書などの確認をメッセージや共有データで行える点もテレワークの大きなメリットでした。

藤原氏:「休日やコロナ禍のときには、教育委員会などから緊急な通知や通達が届くことがあります。テレワークによって自宅でそれをこまめに確認できることで精神的なストレスが減りました。また、自然災害が発生したときなどは保護者宛てに『警報発表時には自宅待機をお願いします』などといったメールを発信するのですが、それも自宅で行えるのでタイムロスが少なくなりました」

すでにテレワークを導入していた西条市の小中学校では、コロナ禍でも大きな混乱が起きなかったのです。

児童生徒の学力向上につながり、育児や介護の精神的負担も少なく

西条市ではテレワークの導入によって教職員の勤務時間を年間162.6時間削減することに成功しました。テレワークだけでなく、電子黒板や校務支援システムを導入したことで児童・生徒の学力も11.0%向上しました。
休日出勤をする教職員も減りました。育児や介護をしている教職員は自分の生活に合わせて仕事をする時間を決められることで、精神的負担が少なくなったといいます。また、USBメモリーの紛失などの危険がなくなり、セキュリティも向上しました。
とはいえ、テレワークにも課題はあります。例えば、休日も自宅で仕事ができることで、時間外勤務が増えたという教職員もいます。

これまでの成果

西条市は電子黒板やデジタル教科書などといった授業の質を高めるためのICTツールも小中学校に導入している。

藤原氏:「当校で行ったアンケートでは、『臨時休校中にテレワークを行っているとき、学校で直接、先輩に会って教えてもらいたいことがあった』という若手の教職員の正直な意見もありました」

テレワークをより利用しやすくするのも課題の1つと渡部氏は言います。

渡部氏:「夏休み期間中にテレワークを行うための申請が必要だったり、テレワークを実施するための報告書を提出しなければならなかったりするのですが、もっとシンプルにテレワークを行えるようにしていきたいですね。誰もが使いやすいICTの環境整備と合わせて手続きの簡素化を図ることが私の課題です」

西条市は今後、学校現場でのテレワークの取り組みをさらに発展させていく方針です。

渡部氏:「テレワークの導入を進めていたときに、祖母の介護のために仕事を辞めなければならないと悩んでいた教職員がいました。テレワークの導入が決まって、すぐに利用したその方は私にお礼の電話をかけてくれました。今でもすごく印象に残っています。その方のようにやる気のある素晴らしい先生が家庭の事情などで離職したら、西条市にとっても、我が国の教育界にとっても損失だと思うのです。限られた人材の力を生かし、職場の生産性を高めるため、テレワークは有用な手段となり得ると思います」

また、教育現場で働く立場から藤原氏はこう話します。

藤原氏:「今、学校では教職員の業務が多いことが課題になっていますが、校務のICT化がその解決につながることは間違いありません。さらに教職員の意識改革が加わるとより早く解決できると思います。ICTツールで良い教育を行えるのかと疑問視されがちですが、思い切って一歩踏み出して利用してみると案外うまくいくもので、今や当校ではICTツールの利用が当たり前になっています」

西条市は現在、行政分野でのテレワークの導入を進めています。

渡部氏:「市役所ではまだテレワークを行うためのシステムを構築したばかりです。現在はトライアルとして24人の職員が勤務時間内のテレワークを行っており、今年の11月からの本格運用を予定しています」

先進的にテレワークの導入を進めてきた西条市。同市の取り組みは教職員の働き方の見直しを図る地方自治体や学校などにとって参考になるはずだろう。

西条市

愛媛県
所在地 愛媛県
業種 公務(他に分類されるものを除く)
企業規模 1000~4999名
URL https://www.city.saijo.ehime.jp/

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